今、立ち上れ 一、自己憐憫(自己をあわれむ)は自殺行為の一つである。 「兄弟にむかって愚か者と言う者は裁判にわたされ馬鹿ものと言う者は地獄に投げこまれるであろう」とイエス様は言われました。それなら、自分に対して、「おれは馬鹿だ、、私はダメだ」と言う人は、自分に対して殺人罪(つまり自殺)を犯しているのに等しいのではないでしょうか。 聖書は「友のために生命をもすてる」大いなる愛を説いてはいますが、これは肉体的生命のことであって、決して自身の霊性を滅し、又損傷することをすすめているのではありません。かえって「自分自身を憎んだものは一人もいない」(エペソ五・29)と言い、「自分を愛するように人を愛しなさい」と言って、自分以上に人を愛せよとは言っていないのです。人はまず神を愛した次には自分自身の霊性を尊重し愛さねばなりません。 自分を憐れみ、時には自分をのろいさえする人もありますが、これは自己自身に対する反逆であり、ひいては人間を造り、これに霊の息を吹き込みたもうた神様への反逆であります。 二、自己憐憫の人は他人に迷惑である。 新約聖書のヨハネ五・1~9を読みましょう。ここに出てくる人物は自己憐憫の標本のような男であります。彼は三十八年間病気をわずらい、遂にこのベテスダの池に来ました。この池に天使が来て水をかきまぜる時、一番早く水に入るものは病気がなおると言うのです(今で言うなら間歇泉で新しく湧き出る水にはラジウム線が強いので病気によく効くとでも言うことでしょうか。ともあれ、聖書を学ぶ時、こういう合理的解釈にあまり時間をかけないほうが良いのです)。 しかし、この池に来たものの誰も彼をかかえて水に入れてくれる者がいない。そこで彼の心には三十八年来のにがにがしい気持、不平、不満が一杯になって言うこと為すこと一切が周囲をいらいらさせ、人を遠ざけてしまう。自己憐憫の人は、人を傷つけようとする悪意は一つもないのだけれども、事実は周りの人に迷惑な存在になってしまうものなのです。 三、自己憐憫の人は行き止まりの人である。 この三十八年病気の人に、イエス様は「なおりたいか」とお聞きになる。これはエリコのバルテマイに、「どうしてほしいのか」と聞いたお言葉にくらべるとずいぶん水準を下げた問いかけです。この問には、答えは「はい、なおりたいです」と答えるだけでよいと思うのに、この男は 「誰も私を水に入れてくれません」 と問われもせぬ事を言い、責任を他に負わせ、不平不満たらたらです。 こうして、自己憐憫の人は一歩も動こうとせず、不平不満の中にすわりこむ悪いくせがあるのです。 四、イエスのあわれみ 聖書の他の場所をさがすと、イエス様はたいてい、いやしの前に信仰を求めています。特にこの男は過去に犯した罪の故に病気になっていたらしいのですが、イエス様はこの男に悔い改めも信仰も求めず、ただ彼の長い病気の悩みに目をとめられました。これは実に特別な恩寵であります。悔い改めて信じて救われるのが正常な入信の道でしょうが、イエス様の直接の救の道は時折ケタはずれでありまして、常道をとびこえて救われるのであります。 五、起き上れ イエス様は、その男に悔い改めも信仰も要求しなかったかわり、三つのことを命じました。第一に起き上ること、第二に床のマットを取り上げてかつぐこと、第三に歩くこと。 こういう時、イエス様は手を取ってやることがよくありますが、この時はなさいません。この男がまず自力で起き上るのを待っています。じっと見つめています。男は御言によって一人で起きました。起きればマットを持つことも割合かんたんです。そしてドンドン歩いて行ってしまいました。イエス様のお名前さえ聞かずに。 自己憐憫の人に最も必要なことは、この起き上ることです。坐りこまないで、動きはじめることです。為すべき小さなことにでも、早速手をつけることです。心の耳をすましてごらんなさい。ほら!「今、たち上りなさい」と主があなたにも言われているでしょう。(一九七九・七・一二 中野家集会にて) (1979.7.15週報「キリストの福音」より)
by hioka-wahaha
| 2016-11-17 09:19
| 週報「キリストの福音」
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