手島先生と私の信仰の相違
手島郁郎先生が天に召されて、既に38年になる。先生は私の感覚によれば世界的人物であった。先生の信仰は独特だが、私は先生を心から尊敬する。崇拝と言っても良いくらいだ。(ある先生が「私の崇拝するのはイエス様お一人、他の先生方や歴史上の聖人クラスの方々でも尊敬はするが崇拝はしない」と言ったことがある。そういう意味では確かに崇拝ではないが、しかし矢張り、手島先生だけは崇拝と言ってもよいくらいの気持ちで先生を偲んで居る。) とは言え、私は先生のそばから意図的にはっきり逃げ出した人間で、だから先生からは公けに破門を食った人間なのである。変な言い方だが、私はこの「破門」を名誉のごとく有難く思っている。手島先生の許から逃げ出した人は山ほど居るだろうが、正式に破門を食った人は数える程しかいないだろう。これは私にとっては名誉の破門だとさえ思っている。(これを聞いたら先生は「困った奴だなあ」と、苦笑されていることでしょうね) 手島先生から私が去ったのは、何も感情的な、あるいは誤解や、そういう事情ではない。先生と私の信仰との間に抜き差しならぬ相違点があったからである。勿論、表面的にはその年の新年聖会の会計に私の金銭処理に千代奥様が不審の念を抱かれたからであったが、私はその点において良心的には今でも疾しい点は一つもないが、会計簿記上の誤解されやすい欠点はあったと思っている。千代奥様が不審の念を抱かれたのも無理はないと後になって気がついた。しかし、その弁明をしようにも、もうその弁明する場がなくなってしまっていた。弁明すれば弁明するほど、互いの心理状態が誤解に誤解を重ね、もつれてしまうことは分かりきっていた。私はそれ以上弁明を試み、幕屋の組織に残ることを諦めたのである。 * しかし、私が手島先生のそばを離れたのは、もっと根本的な理由がある。それはいずれが良い、いずれが悪いという、そういうことではない。信仰上の問題点である。 先生は私の信仰上の大事なテーマ、信仰義認について、理解して下さらないであろう、ということであった。先生の信仰の凄いのは、先生の信仰実存の確固たる聖霊体験である。そこから溢れ出る確信である。奇蹟的神癒や預言などの表出もある。正に天才的です。私は先生は言わば「天才だった」と言うのです。 先生はよく、「自分は小学校の時から劣等生だった。皆に付いて行けなかった」と仰有っていた。察するに他の子供たちには付いて行けない一種の天才ぶりを、「僕は低能だったよ」と言って聞く者を笑わせていたが、その周囲の者に些かも理解して貰えない不幸さを幼い時から持っていたように思われる。そこに先生の不幸さもある。しかし、そこに先生に生れながらの天才的独自の生き様を植え付けられた神様の尊いご配慮もあったのだと拝察する。私にすれば、「手島先生は正に天才であった」と言う外はないのです。いいえ、「更に傑物であったですよ」とも言い添えたいのです。 この先生の信仰の独自の確立性から、私が主から頂いていた「信仰義認」の信仰を受け付けないという不幸がおこったのです。先生にとっては「信仰義認」の信仰は、一種の合理的頭脳論理による知識の組立てでデッチ上げた理屈の信仰のように思えたらしいのです。いや、私は先生がこう仰有るのを確かに聞いたのです。「義認信仰というのは僕は分からんね」。 「いや先生……」、私はさえぎって、私の「義認の信仰」を聞いて頂こうとしたのですが、「それは単なる理論的言葉の組立てに過ぎない」と、踏んだようです。私はこのように手島先生が「義認信仰」への理解が出来ないことに内心おびえたほどです。 先生は「義認信仰」とは、単なる言葉の組立てによる、信仰の論理的積み上げであって、その人の実存的信仰になっていないと断じたのですね。 * 私はしかし、22歳の11月23日の回心の体験があります。私にとっては、「義認の信仰」は徹底して私の霊の底において、ある日、ある時、その瞬間、現実的に起こった事実であります。私はその瞬間から、イエス・キリストの救に預かり、私はイエス・キリストの血と肉の死により生まれ変わって、神の子とさせて頂いた、この疑うことも隠すこともできない宇宙的出来事を我がものとできたという奇蹟の一瞬を私は誰に向かっても堂々と証言できる、この不思議さに我ながら驚嘆しつつ賛嘆せざるを得ない。この神様よりの恩寵を如何に称えたらよいでしょうか。その言葉を選ぶのに苦しみます。 しかし、先生から見れば、「義認の信仰」というのはアタマで言葉をもてあそんで、自分は救われていることにしてしまう、たちの悪い偽信仰ということになるのでしょうか。 この義認信仰の在り方が分からないという、手島先生はまさに幸福な方です。ご自分の信仰にしっかり自信が持てる大確信者です。「俺は神様を信じ、イエス・キリストを信じ、聖霊を信じ、この確信を握って、多くの信徒たちを驚嘆させる奇蹟的な業をも実践できる。神様からの多くの奇蹟を皆さんに見せて進ぜよう」、こういう信仰をもって私たちに語ってくれました、あの先生のご様子を今も思い出して、私は陶然とします。あのような先生が現実に生きておられたのだ、それを私たちは目の前で見聞きできた、また按手を受けてぶっ倒れた、あの感覚を未だにまざまざと覚えておられる方々も多いでしょう。 こんな思い出を「テシマ崇拝」のグループ活動にしてしまうのは危険がありますが、しかしいつまでも大手島を懐かしんでいることは同様の体験を持つ人々にとっては止むを得ないことです。 ともあれ、私のテシマ経験の一端を申し述べました。前述したように私は手島先生から離れ、先生からは大っぴらに破門されたわけですが、今に至るまで、私は先生の恩義を忘れませんし、千代奥様のご愛顧も忘れません。また先生から受けた信仰上の教え、頂いた霊的賜物、そして先生の情の厚いご恩顧を私は到底忘れることは出来ません。今は既に天におられる先生ご夫妻に心からの感謝、御礼を捧げたいのであります。(釘宮生)
by hioka-wahaha
| 2011-10-04 16:13
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