信仰とはむつかしいものか 先日、伯父釘宮徳太郎の昇天四四年記念集会があって本家にまねかれ、その司式と説教をさせて頂き、まことに光栄、また感慨無量でありました。次のように言うのは、余りにたかぶった言葉で、人に対しては非礼であるかもしれませんが、「伯父は家名をM子さんに、事業をR兄に、集会をK先生とその後の別府集会に、そして信仰をこの私にのこしてくださった」と思うのであります。親族一統、又、別府集会の方々等三十名ほど集って、「直線的かつ多面的」(当時の原田美実先生の評のよし)なる伯父の信仰人物像をしのび、集会後の座談もなかなか豊富でありました。さすがにこういう席上らしく、クリスチャンでない方々からでも信仰的な話題ばかりで、大変良い交わりとなりました。ただし、しばしば「信仰はむつかしい。信仰はむつかしい」という言葉が出てきて、私は大変気になったのでありました。 私どもの間では余り聞かれない言葉だものですから、多少奇異に思い、二、三日して、ある集会の時「みなさん、私にかくれてひそかに信仰はむつかしいネ、など言っているのではありませんか」と聞いてみたところ、そういうことはないそうです。けれども、口には出して言わぬけれども、実際は心の中で「信仰はむつかしいなァ」と、思っている人があるかもしれません。求道中の方は特にそうでしょうね。 信仰がむつかしい、というのには次の三つがあると思います。 ①聖書や教会で使うコトバがむつかしくて分らぬ。 ②聖書や教会のお話はそれは立派な事ばかりで結構だが理想主義空想論で実行はできそうもない。 ③神の存在や、キリストの十字架の贖罪など、信じたいと思っても信じられぬ。信じられる人がうらやましい。 第一のコトバのむつかしさ。これは魚を食べる時のように、食べれる身のところから食べて、おいおいハラワタや骨の方も味わうがよい。聖書のむつかしい処は、大学の教授でも博士さんでもむつかしいのですから。 第二の実行のむつかしさ。これは、もっともでありまして、聖書の教えには、個人的聖者でなければ実行不可能なような金言名句訓戒説話が豊富です。これらの言葉を遠くよりながめて、他人事のように「むつかしいですなァ」と嘆賞するむきもあります。深刻なのはそういう人と違って、血みどろになってそれらの聖書の言葉を実行しようとして、刃折れ矢つきて絶望に至る人です。人間のあらゆる業(わざ)につきまとう利己心につき当って、人間悪の深淵にあえぐのです。しかし、ここにいつまでもいる必要はありません。 第三の信仰のむつかしさは、信じられぬ非合理な教理をむりやりアタマで承認し、信じることにしよう、思いこむことにしようとするタイプ。あるいは、信じたいと熱望しつつ信じられぬ自分の魂のガンコさに悩むタイプ。いずれにせよ、自力で信じようとすれば、無理です。仏教風に言えば「仏の方よりもよほされ」、神の賜物として信仰が与えられるのです。たいていの場合、この信仰を頂くためには、第二の深淵は必要路で、この死の蔭の谷をとおって、信仰の峯に辿り行くことが出来るのです。 信仰は自力ではない、絶対他力である、と言えば、これはもともと真宗的用語ですから問題があります。信仰とは本当は人の心と、神の霊の協同作用のような所があります。この神の霊にもよほされて信仰のおこる時、むつかしい事は何一つありません。 なお又、信仰を実際社会(家庭、職業、経済、肉体等)の問題に適用して平和、成功、繁栄、健康を得る事は(こういう事は新興宗教の一手独占販売である筈がない)、天地の造り主、唯一のまことの神様を信じる者に能わぬ筈がないのであります。(二・二九・釘宮) (1980.3.2週報「キリストの福音」より)
by hioka-wahaha
| 2017-02-22 14:20
| 週報記事1980年
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