心の清き者は神を見ん 昔、お殿様が病気にかかると、早速ご典医が呼ばれる。ご典医は、じかにお殿様の体にさわるのは恐れ多いというので、手首に糸をつけて、その糸の端をもって脈を診(み)たという。これを糸脈という。まさか事実ではあるまいと思うが、そういう話が伝わっていますね。 女の子によくある。体の具合がわるい。お医者に行く。お医者が診察しようと思って、胸をひらけという。さァ、いっかな下着をひらこうとしない。とはいうものの、痔だとか性器のあたりの病気になると、女の子ならずとも誰でも嫌だろう。あるいは又、むし歯。つつかれると痛いので、つい歯科医に行かぬ。やっと歯科の玄関をくぐる時は、もうどうしようもない時である。 人間には、それぞれ人に見せたくないところがあるものですね。 罪という字は、目の下に非と書きます。誰の目にも非と見えることです。しかし、それを誰の目にも見せまいと思って包(つつ)みかくす、その「つつむ」という言葉がつまって、「つみ」という日本語になったという人もいます。そんな気もしますね。 罪は、心の内にかくせばかくす程くるしいものです。「人の心は病苦をも忍ぶ。しかし心の痛むときは、だれがそれに耐えようか」(箴言一八・14)という程でして、耐えがたいものです。 盲腸が痛むとき辛抱して、命取りになるまで手術をこわがっている人もいる。しかし、常識ある人は、早々に外科に行って、思いきりよく切ってしまう。 同じように人間も、心を痛ませる罪を思い出す時、それを思いきりよく、神様に告白して、その罪を許して頂き、早くサッパリすることです。 「私が自分の罪を言いあらわさなかった時は、 ひねもす苦しみうめいたので、 わたしの骨はふるび衰えた。」 (詩三二・3) 「わたしは自分のとがをあなたに知らせ 自分の不義を隠さなかった。 わたしは言った、 『私のとがを王に告白しよう』と。 その時あなたはわたしの犯した罪をゆるされた。」 (詩三二・5) と、旧約聖書にあるとおりです。 神の前に、また人の前に、自分の罪をさらす事は、痔のお医者に行くように恥ずかしく又、歯科医に行くように痛さがこわい、実にいやな事です。しかし、この関所を通りぬけると本当に神にゆるされる救の体験をします。そして又、救われてのち、クリスチャンと称している人も、この「罪の悔改め、告白、潔め」の毎日をすごしてごらんなさい、「心の清いものは神を見る」という御言が少しずつ分かってきますよ。 罪は、クリスチャンにとって、根底的な、「原罪といわれる人間の基本的罪人としての立場」を許され神の子とされるという救いの教理に対応する罪と、救われてのち日々許され日々きよめられる日常的罪(といっても人間の肉の本性にむすびつく罪ですね)の二つの面が考えられるように思います。 マルチン・ルターが、ピラトの階段で上り下りしている時、「義人は信仰によりて生くべし」との御言で回心した時の罪の救は前者です。その同じルターが、有名な「キリスト者の自由」の中で「クリスチャンの生涯は日々悔改めの生涯であるべきである」というのは、後者の罪の許しですね。 人は、きよめられれば潔められる程、自分の罪が分かってきます。聖パウロは「私は罪人の頭である」と言いました。刑務所に入っている犯罪人はしばしば、こう言います。「私には罪はないんだ。まわりの者が私をひがませ、道をあやまらせ、こうしてしまったんだ」。 自分の罪を多く感じる人は、多く許された人です。これまで多くの罪を告白し、多く許されているからです。そして多く許された人こそ、多く人を許し、多く人を愛する人です。多く罪を知り多く罪を許された人でなければ人を多く愛し得ません。(ルカ七・47) (1976.4.4「キリストの福音」より)
by hioka-wahaha
| 2014-11-12 16:26
| 週報「キリストの福音」
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