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No.514 人それぞれ、人生はその人のもの 2011.11.13

人それぞれ、人生はその人のもの   


 N兄が病を得て、入院した。見舞いに行く。私は病室を見回して、
 「懐かしいなあ」と言った。
 この病室か、どうかは分からないが、私の愛する妻トミさんがしばらく何ヶ月か入院していた病院なのだ。
 すっかり忘れていたが、病室を見ると思い出した。30年ほど前のことになる。そのとき私はよくこの病院に彼女を訪ねたものだった。
 しばらく東京などに出張せねばならないようなことがあると、その事を知らせれば淋しがるだろうなあと思いながら、気を使って彼女に語りかけた、その当時の病室の雰囲気を私は思い出したのである。

 N兄は心もとない感じで、ベッドに寝ていた。3週間前に危篤状態だったとは思えぬほど回復している。今はそれほど心配な病状ではないとはいえ、やはり体力気力は完全に戻っていない。
 「いつも、イエス様がご一緒に居て下さるんだよ。よく祈りなさいね」
 と声をかける。
 この病室にはベッドが二つしかなく、しかも、もう一つのベッドには入院患者はいなかった。部屋に居るのは、N兄、彼一人である。これは、好都合だ。
 そこで、彼に祈りなさいよという言葉をかけたのだ。この言葉を、彼が心に覚え、そして、いつもの私の祈りの真似をしてでも祈るようにと、私の祈りの習慣を彼に薦めたのであるが、これは彼の為のみの私のした事であって、すべての人にそのようにするわけではありません。
 お一人、お一人、信徒の方は、その人なりの祈りを身につけてゆく。
 ある人は、キリスト教の祈りというものは牧師さんがキチンとしてくれるものだ、と思っているかもしれないが、信徒でも古い信者さんは皆できる。一般の教会では、祈りは牧師さんに任せておくだけ、一般信徒は皆で一緒に祈る時、声を合わせてムニャムニャムニャと祈っているものだと、と思っているだろうか。
 ところが、この教会では時々訳の分からない言葉で無闇に大きい言葉で声をあげて祈る人もいる。あれは異言と言う特殊な祈り、これがこの教会の特徴だ。「とにかく、元気な声で、びっくりするよ、この教会の祈りは」と言う人もいる。これが普段の礼拝です。

 N兄は、私が旧大分市内の二階座敷に住んで居た時からの信徒で、私の死んだ愛妻トミさんの従弟である。大分県国東(くにさき)半島、徳川末期の国学者三浦梅園の学塾のあった村の出身である。
 そうした結構な村に生まれたのであったが、人生に挫折し、母になる人が私の所に連れてきて弟子にしてくれと言う。そこで私が預かって内弟子のようにして一緒に住んで、信仰生活を送って来た。しばらく家族同様であったが、後に似合いの姉妹と共になり、私が司式して結婚式を挙げた。
 この姉妹も忠実な信徒だった。古い信徒はご存じの木南姉妹の許で信仰を学び、また日々の生活の生き方も鍛えられていた。しかし、残念なことに3年前に召された。だから、N兄はその後、妻のいない寂しさや不便に耐え、鍛錬されて、これからの、この教会の将来を背負って立つ一人になるであろうと信じている。
 ついN君のことを書いてしまったが、人が教会に触れ、信仰に導かれてゆく、そのいきさつを思い返してみると、人生を導く神様の御手の不思議さには感嘆せずにはおられない。
 N君の忠実さも、又その夫人に似て、抜群である。特に、教会に対してと、又この不出来な牧師に対しての忠実さも群を抜いている。何時も牧師に密着して教会のご用を果たしてくれているのは、信徒御一同、衆目の一致するところであろう。
 こんなことをベタベタ書かれては、N君は恐縮のあまり居たたまれないであろうが、幸い入院中である。今朝の礼拝の席にはいない。
 教会の玄関前に立てる説教題の看板書き、何年か書いている内に、見事になった。最初の内は決して上手な字とは言えなかった、ところがどうです。下手な字を毎週、毎週、忍耐して忠実に書き続けているうちに、立派な書き手になった。風格が出来て、字としての味が見えてきた。単に上手なのではない。佳い字が見えて来たのです。
 一人一人、その人独自の成長の道を神様はそなえておられるのです。《く》 


私の宗教問題
     
       二

<日岡だよりNo.511よりつづき> 
 エネルギーがこれに似ている。宇宙に充満するこのエネルギー、目に見えず、手に握れない、真空状態にも充満しているのかな、この不可解なエネルギー、これこそ、ヨハネの言うロゴスにふさわしい。これが、私の言う「真実」。宇宙の真実―――これぞキリスト。
<つづく>
(1973.11「心に満つるより」No.2より)
by hioka-wahaha | 2011-11-15 17:15 | 日岡だより
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