私が神癒信仰を体得したのは
私が神癒の信仰を持った切っ掛けは、私の30歳の頃ですが、西田天香先生の一燈園生活にあこがれ、一燈園生活を実践しようと努力を始めたことに端を発します。 一燈園と言っても知らない方もあるでしょうが、京都の山科にある修養団体と言ったらよいでしょうか。西田天香という人が始めた無所有、無一物、徹底下座、謙遜の限りを尽くして奉仕生活に従う団体です。 大正・昭和の日本において宗教的人物として最も世に知られ、かつ事実、凄かった人物としては、賀川豊彦先生とこの西田天香先生に勝る人はないでしょう。 マタイの福音書第6章25節以下のお言葉、その章の終りまでお読みください。「何を食べようか、何を飲もうかと、自分の命のことで思いわずらい、何を着ようかと自分のからだのことで思いわずらうな。命は食物にまさり、からだは着物にまさるではないか。空の鳥を見るがよい。まくことも、刈ることもせず、倉に取りいれることもしない。それだのに、あなたがたの天の父は彼らを養っていて下さる。あなたがたは彼らよりも、はるかにすぐれた者ではないか。あなたがたのうち、だれが思いわずらったからとて、自分の寿命をわずかでも延ばすことができようか。また、なぜ、着物のことで思いわずらうのか。野の花がどうして育っているか、考えて見るがよい。働きもせず、紡ぎもしない。しかし、あなたがたに言うが、栄華をきわめた時のソロモンでさえ、この花の一つほどにも着飾ってはいなかった。きょうは生えていて、あすは炉に投げ入れられる野の草でさえ、神はこのように装って下さるのなら、あなたがたに、それ以上よくしてくださらないはずがあろうか。ああ、信仰の薄い者たちよ。だから、何を食べようか、何を飲もうか、あるいは何を着ようかと言って思いわずらうな。これらのものはみな、異邦人が切に求めているものである。あなたがたの天の父は、これらのものが、ことごとくあなたがたに必要であることをご存じである。まず神の国と神の義とを求めなさい。そうすれば、これらのものは、すべて添えて与えられるであろう。だから、あすのことを思いわずらうな。あすのことは、あす自身が思いわずらうであろう。一日の苦労は、その日一日だけで十分である。」 西田先生は、この聖書のお言葉を引用されて、ご自身の清貧そのものの生活ぶりが、どこから来ているか、説明なさったものです。そして、その生活ぶりを、そのまま私たちに見せてくれますから、一言の反論もできません。本当に納得できます。 ただし、こういう無一物生活の中で、もし病気になったらどうするのか、この質問に会う時、私は金は無くてもよい、神様に癒して頂くんだと言い切って、そして神癒の信仰に突入したのです。こうして私は神癒の信仰を獲得することになりました。 一燈園の実験(と言うのは可笑しいでしょうか、しかし正に)、金や経済の世界で、聖書で言うようなキレイゴトが通用するかどうか、それをはっきり見せてくれるのが、西田天香先生の一燈園の実際体験です。だからこれを「実験」と言ってみたのです。 一燈園で一番有名なのは「お便所の掃除」です。一軒一軒順番に廻って、「ご免下さい。精神修養と思って、各ご家庭にお願いしております。恐れ入りますが、お宅様のお便所の掃除をさせていただけませんか。いえいえ、お金は勿論いりません。営業ではありません。先程、申し上げましたとおり、私どもの身勝手な修養の一つお願いなのです。お便所の掃除など見知らぬ者たちにさせるのは、ご不審で、いかがわしく、嫌なお気持がなさろうかとも思いますがお許しください」。こう言って、各ご家庭に行き、お便所の掃除をさせて頂く。当方はバケツ、たわし、タオル等々、持っております。 京都の町ですとね、もう一燈園さんは慣れていますから、「さあ、どうぞ、どうぞ」と歓迎さえされますが、慣れない他の地方では、眉をひそめて警戒されますよ。何か、きれい事を言って、他家の様子をさぐりに来たのかしれない、あとで泥棒にでも来るのではないかと怪しまれます。 しかし、こういう時、一燈園の先輩諸氏は、するりと入って行けます。私は特に、西田天香先生の後に従って、先生のなされる様子を拝見したので、よく分かりました。 天香先生と来たら、柔らかい風が舞い降りて来るように玄関や、店先に佇ずみます。そして、「ご免なされや、お願いがございます。修業中の者でございます。お宅様のお便所のお掃除をさせてくださいませんか」と言った塩梅です。実は昔のこととて、やや本当のご様子の程は忘れてしまっていますけれども、まあこんな風でした。 私流に言いますとね、こういう時の天香さんのお姿は風流なんですよ。私の目に焼きついています。 ともかく、天香先生、いや実は天香さんとお呼びしたい。実は一燈園における先生への呼び名は「天香さん」でした。後に参議院議員にもなられた天香先生でしたが、お名前を呼ぶ時には、やはり「天香さん」です。思い出すのは、1956年、昭和31年ですが、いわゆる夏の集いです。大分の私どもの集会から10名ほど揃って参加したものです。天香先生も特に心を留めてくだって私ども一同をお呼びくださり、お声をかけてくださったものです。 その後、天香先生も亡くなられましたし、私も一燈園からやや遠ざかりましたが、あの「無一物中無尽蔵」の体験は忘れられません。さて、無一物で金はない。病気をすれば「神癒」で乗り越える。正に勇気ある信仰でしたね。《く》
by hioka-wahaha
| 2011-11-01 17:19
| 日岡だより
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