No.499 国井一男君を天に送る 2011.7.31

国井一男君を天に送る   

 教会の週報の第一頁だから、やはり国井一男兄と書くべきかなあと思ったが、どうもなじめない。やはり国井一男君を天に送ると書いてしまった。一昨年12月2日に細君のキノさんを天に送って約1年半経っている。型破りのクリスチャン夫婦だったから、おどけて書けば書きやすいのだが、真面目に書こうとすると困難する。
 酒場で一杯飲んで、キリスト教の伝道をさせれば、この人にかなう人はない。まあ、そんな場面を私も見たことは無いのだが、想像すると場面は自然に私の脳裏に湧いて来る。
 一度、彼が市内のかなり大きい病院に入院したことがあって、私は彼を見舞おうとして行ったのだが、なんと病院に入ったとたん、玄関のすぐそばの待合室に患者さんたちが6、7人集まっていて、一人の男が何か盛んにしゃべっている。よく見ると、そのしゃべっているのが、この国井一男君である。
 聞いてみるとキリスト教の伝道をしているのだ、私はビックリして聞いていたが、なんとも言えない奇妙な、そして巧みな、伝道説教である。私には、こんな伝道説教は如何に努力しても出来ないだろう。
 もちろん、彼もまだ教会に来始めて半年も経っていなかっただろう。整ったキリスト教の信仰の紹介をしていたわけではない。ただ、教会はいい所です。みなさん、いらっしゃい、という簡単なことをしゃべっていたに過ぎない。しかし、その初めて聞いてくれる初見の人たちに臆することなく、楽しく聞いてもらっている彼の素朴な愛らしさに驚嘆したのである。
 決して、上手な話しぶりではない。あくまで素人っぽい話しである。しかし、これが終生彼が見せてくれた、彼の魅力である。
         *
 この国井一男兄、ここ数年は介護施設のお世話になっていたが、先日7月27日、突然体に不調を来たし、国立医療センターに運び込まれ、救急のベッドで召されて行ったのです。私が状況を聞いて、急いで医療センターに駈けつけた時には、午前9時半頃だったでしょうか。すでに心肺は停止していましたが、私たちが行くまで医師は待っていてくれました。
 私は、この彼の最後の時に居合わせていることに感動しました。主様に感謝しました。キリスト教の伝道者がよくやるように、言葉で話して聞かせて、納得させて、信仰に導くタイプには対応しにくい国井君です。
 そうでなく、人間対人間の友情の中で意志を通じ合い、理解し合い、理屈抜きで、信仰を通じ合う仲間となる。この釘宮義人と国井一男と共にイエス様を信じ合う仲間になる、その時が来ていると感じたのです。 今更と思うけれども、いいえ今更です。彼にしっかり福音を語って置きたい。私は心を込め、病院の安置室で看護師さんの聞いている所で、最後のメッセージを語りました。
 彼の耳に近づけて大きな声で語ります。人は死に直面して耳の聴力だけが最後まで残っていものだと聞きます。ドイツの田舎では今でも死人の耳を開いて、その耳に向って大きな声で「おおい、天国へ行くんだぞう。間違っても地獄の道を行くなあ」と叫ぶんだそうです。私はその話を聞いて以来、亡くなった方の、特に信仰がはっきりしなかった人に向かっては、よくこの地上最後の天国宣言を叫んだものです。
 今回も我が愛する国井一男君のためにも同様にこの叫び声を浴びせました。彼の魂が嬉々として天に向かって昇って行くことを魂の目で見、また祈りました。私自身、私の心にそのことを、しっかりと語りかけ、また祈ったものです。
 彼、国井一男兄弟の召天を見送りつつ、かの天上にて待っている彼の妻、国井キノさんへの伝言を委ねつつ、私の天国への憧憬の目を閉じたのでした。(釘宮)


私にとっての禅   

         (二)
 
 <先週よりのつづき>
 似た話では、昭和初期の話で、実力があるくせに小心の為にその力を発揮できぬ大波という力士の為にある有名な禅僧が指導した。
 「お前の名前は何という。」
 「へェ、大波と申します。」
 「そうじゃろ、これからはお前が大波になった気でいるんじゃ。ザブーンと沖から打ちよせて、岩でも舟でもひっくりかえしてしまう大波じゃ。」
 そういって大波を坐らせ、冥想させて、自分が大波になったような気分になるよう指導した。一夜あけた大波は人が違ったように雄々しい力士になり、以後バッタバッタと連日相手をなぎたおしたという。
 これはまァ、ウソでもあるまいし、それ自体結構な話で、一応の名僧知識だもの、そのくらいの指導ができなくてはなるまいと思う。しかし、それが禅の真髄のように思われては達磨も臨済も泣こう。
 <つづく>
(1973.11「心に満つるより」No.2より)
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by hioka-wahaha | 2011-08-02 15:00 | 日岡だより
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